性感染症の一種である淋病（淋菌感染症）は世界中で発生しており、日本でも年間を通じて多くの方が感染しています。
淋病とは、どのような病気なのでしょうか。
今回は、淋病とは何か、感染するとどのような症状が発生するのか、また感染経路や検査・治療方法についてもあわせて解説します。
淋病とは？
淋菌感染症、通称淋病とは、細菌の一種である淋菌に感染することで起こる性感染症（性病）のことです。
淋病は世界中で感染報告があり、国内でも感染報告が多くあります。
出典：厚生労働省「性感染症報告数（2004年～2022年）」
厚生労働省がまとめる「性感染症報告数」を見ると、男性の感染報告数は年間約7,000～8,000件ほどで推移しており、多くの男性が感染していることが分かります。
女性の感染報告数が男性と比較して極端に少ないのは、女性は淋菌に感染しても自覚症状に乏しく、医療機関を受診していないことが背景にあると考えられています。
淋病は、20代での感染が多いことも特徴です。
淋菌に感染していることに気づいていない女性との性行為によって感染する可能性もあり、男性は特に注意したい性病といえるでしょう。
淋病の代表的な症状
男性が淋病に感染すると、次のような症状が現れます。
- 尿道から膿や粘液性の分泌物が排出される
- 排尿の際の激しい痛み
- 尿道のかゆみ、不快感
- 発熱 など
淋病になると、急性尿道炎によって膿や粘液性の分泌物が尿道から排出されるほか、排尿の際の激しい痛みや尿道のかゆみ、不快感などの症状があらわれます。
尿道炎の症状である排尿痛や尿道分泌物は、感染から2～10日の潜伏期間を経て出現します。分泌物は量が多く、黄白色であるのが特徴です。
治療せずに放置し、重症化した場合には、前立腺炎や精巣上体炎になる可能性があるため注意が必要です。
これらが発症した場合、前立腺や陰嚢が腫れる、うずくような痛みを感じる、発熱するなどの症状が現れます。
ときには歩行が困難になるほどの痛みが生じることがあるでしょう。
その他の症状
淋病は、オーラルセックスやアナルセックスでも感染します。
オーラルセックスによって喉に感染した場合、喉の腫れや喉の痛み、扁桃腺の腫れ、発熱など、咽頭炎に似た症状があらわれることがあります。喉への感染では無症状のケースも多く、感染に気づかないことも少なくありません。
アナルセックスで直腸に感染した場合、肛門のかゆみや不快感、下痢・血便、アナルセックスの際の痛みなどの症状があらわれることがあります。
また、感染者自身が菌のついた手で目をこするなどして目に感染すると、まぶたや結膜の腫れや膿がみられるほか、まれに失明に至るケースもあります。
淋病の感染経路
淋菌は高温にも低温にも弱く、日光や乾燥、消毒剤によっても簡単に死滅する菌です。
ヒトから離れた通常の環境では生存できません。そのため、主に性行為やオーラルセックス、アナルセックスなどによる感染部位の粘膜との接触や、分泌物との接触によりヒトからヒトに感染します。
1度の性行為で感染する確率は30％程度といわれており、潜伏期間はおおよそ2～10日ほどです。
感染しても無症状のケースも多く、感染に気づかず性行為を続け他者に感染させてしまうことがあります。
前述した症状がある場合はもちろん、性感染症の可能性がある場合には早めに医療機関で検査をうけるとよいでしょう。
淋病の検査・治療方法は？
では、淋病に感染している可能性がある場合、医療機関ではどのようにして検査や治療が行われるのでしょうか。
ここからは、淋病の検査と治療方法についてご紹介します。
検査方法
淋病の検査は、感染疑いの24時間後から可能です。検査は、尿または尿道からの分泌物を採取して行います。
喉に感染している場合には、うがい液などによって検体の採取が行われます。
通常、淋病の検査結果には数日を要しますが、即日精密検査の場合には、検査当日から翌日に検査結果が出ます。
また、淋病はクラミジアと同時に感染することもあるため、淋病検査とクラミジア検査を同時に行うことが多いです。
治療方法
治療は、抗菌薬（抗生物質）の注射や内服で行われます。淋病であることが判明した場合には、パートナーにも検査をすすめることが大切です。
ご自身だけでなく、パートナーも検査・治療を行うことが再感染の予防につながります。
淋病は予防できる？
淋病の治療を行っても、予防しなければ再び感染してしまう可能性があります。
淋病にならないために、まずはコンドームを正しく使用するようにしましょう。また、パートナーに検査・治療を受けてもらうことも大切です。
しかし、オーラルセックスによる感染などはコンドームを使用していても防げません。
コンドームによる予防以外の方法の1つに、性感染症予防薬による予防があります。
性感染症予防薬（ドキシペップ：Doxy-PEP）
性感染症予防薬（ドキシペップ：Doxy-PEP）とは、性交渉後72時間以内に抗生物質のドキシサイクリン（ビブラマイシン）を服用することで、一部の性感染症を予防できる性病予防薬です。
特に菌量が増える前の性交渉後24時間に服用することが望ましいです。
ドキシペップでは、梅毒・淋病・クラミジアを予防でき、その予防効果は梅毒で87％、淋病で55％、クラミジアは83％と発表されています（※2022年7月国際エイズ学会発表の数値）。
オーラルセックスを含む性行為をする可能性がある方、複数のパートナーと性行為をする可能性がある方、過去に性病に感染した経験がある方、性的サービス店を利用する機会のある方は、性感染症予防薬の使用を検討してみましょう。
ただし、日光過敏症の方や、テトラサイクリン系のアレルギーがある方は服用できません。
また、下痢や吐き気、めまいなどの副作用が生じることもあります。使用されたい方はまずは医師に相談してみましょう。
「淋病かな？」と思ったらすぐに病院へ！
毎年、多くの男性が淋菌に感染しています。
淋病は感染しやすい性病のため、性行為後に症状が出た場合にはすぐに医療機関を受診して検査を受けることをおすすめします。
また、喉や肛門に感染した場合は無症状のことも多いです。症状がなくとも、感染の可能性がある場合には定期的に検査を受けるとよいでしょう。
また、治療後の再感染を防ぐためには、パートナーにも検査・治療を受けてもらう、コンドームを適切に使用する、性感染症予防薬による予防を行うなどの方法も有効です。
「淋病かもしれない」と悩んでいる方は、早めに医療機関を受診しましょう。
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参考
監修
淺川 純平
ReVIOS MEN’S CLINIC院長・泌尿器科専門医
泌尿器科専門医として長年にわたり幅広い男性診療経験をもっています。
特に専門性が高いのは、包茎手術・性感染症治療・ED治療・男性ホルモン治療の分野。多くの患者様から信頼を集めています。
医療の現場で培った知識をもとに、SNSやコラムを通じて正しい医療情報を発信中。患者様お一人おひとりの不安に寄り添い、安心して治療を受けていただける環境づくりを心掛けています。
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