
「妊活」というと女性が主体と思われがちですが、実は不妊の原因の約半数は男性側にもあります。
パートナー任せではなく、「自分も何かしたい」「精子の質が不安」と感じつつ、何から始めていいかわからない男性も多いのではないでしょうか。
この記事では、妊活における男性の役割とやるべきことを紹介します。
特に、精子の質を高めるための食事、サプリ、生活習慣の具体的な改善策を解説。
また、不安を解消するための男性の検査についても紹介します。
目次
【5】まとめ
妊活における男性の役割とは?まずは知るべき現状
「妊活は女性が頑張るもの」というイメージがまだ残っているかもしれませんが、実はそうではありません。
妊活を成功させるためには、まず現在の状況と、男性の役割について正しく知ることが大切です。
不妊の原因は男女半々にあるという事実
不妊の原因は男女どちらか一方にあるわけではなく、男女ほぼ半々にあることが分かっています。
理由として、多くの不妊治療クリニックのデータや、厚生労働省の調査などでも、不妊カップルのうち約50%に男性側にも原因が見つかると言及されているからです。
つまり、半数のケースで男性側の原因が関わっているということです。
例えば、あなたがもし「パートナーだけが頑張っている」と感じているなら、それは誤解かもしれません。
あなたもパートナーと同じくらい、妊活の当事者として積極的に取り組む必要があるということです。
このように、妊活はパートナー任せにせず、男性も他人事ではないという認識を持つことが、最初の一歩として重要です。
この事実を知ることで、「自分も何かしないと」という漠然とした不安から、「自分ができる具体的な行動」へと意識を切り替えられます。
精子の質や量が妊娠に大きく関わる
不妊の原因の約半分が男性側にある中で、特に重要なのが「精子の質と量」です。
なぜなら、妊娠が成立するためには、精子の「量(精液量)」だけでなく、精液中の「濃度」、前進する精子の割合である「運動率」、そして正常な形をした精子の割合である「正常形態率」といった複数の要素が関わってくるからです。
これら精子の状態が悪ければ、妊娠の確率は大きく下がってしまいます。
つまり、これらの精子の質を決める要素は、普段の食事や生活習慣に大きく影響を受けます。
食生活が乱れていたり、睡眠不足や過度なストレスが続いたりすれば、精子の質も低下するかもしれません。
精子の質と量を向上させるための行動が、男性が妊活において力を入れるべき具体的な対策といえます。
妊活男性が今すぐできること、やるべきこと
妊活における男性の役割は、「精子の質と量を高めること」だとお伝えしました。
では、具体的に今日から何から始めればいいのでしょうか?
ここでは、あなたの体を変えるための具体的な「生活習慣の改善」と「食事・サプリメントの取り入れ方」について詳しく解説します。
精子の質を高めるための生活習慣改善
精子は、作られてから外に出るまで約70日〜90日かかると言われています。
つまり、あなたの今の生活習慣が、約3ヶ月後の精子の状態を決めるということです。
このことからも、日々の習慣を見直すことの重要性がわかります。
喫煙・飲酒を控える
精子の質に影響を与えやすいのが、喫煙と過度な飲酒です。
理由として、喫煙は精子のDNAを損傷させたり、動きを悪くしたりする原因になると多くの研究で示されています。
また、多量のアルコール摂取も、精子の濃度や運動率を低下させるリスクがあります。
タバコを吸っている方は禁煙を、お酒を飲む方は量を控えることが、精子の質を改善するための優先事項です。
完全な禁酒が難しくても、「週末だけ」「量を半分に」といった無理のない目標から始めてみましょう。
バランスの取れた食事を心がける
精子の「材料」は、あなたが食べたものでできています。
そのため、バランスの取れた食事が大切になります。
精子の生成や、精子のダメージを防ぐためには、亜鉛、葉酸、ビタミンD、コエンザイムQ10などの栄養素が欠かせません。
これらの栄養素が不足すると、質の良い精子を作るのが難しくなります。
例えば、亜鉛が多く含まれる牡蠣やレバー、葉酸が多く含まれる緑黄色野菜(ほうれん草など)、DHA・EPAを含む青魚などを意識して食卓に取り入れてみてください。
適切な運動と十分な睡眠をとる
日々の適度な運動と質の高い睡眠も、精子の質を向上させるために欠かせません。
適度な運動は、血液の循環を良くし、精子の質を改善する効果が期待されています。
一方で、激しすぎる運動はかえって酸化ストレスを増やし、精子の質を低下させるという研究もあります。
また、睡眠不足はホルモンバランスを乱し、精子の生成にも悪影響を及ぼす可能性があるからです。
したがって、毎日少し汗ばむ程度のウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動を習慣にしましょう。
そして、夜更かしを避け、毎日7時間程度の質の良い睡眠を確保することを意識してください。
ストレスを溜めないようにする
ストレスは目に見えませんが、精子の質に悪影響を及ぼす要因の一つです。
過度なストレスは自律神経やホルモンバランスを乱し、精子の生成機能に悪影響を与える可能性があることもわかっているからです。
ストレスを感じたら、自分なりのリフレッシュ方法を見つけて定期的にストレスを発散させましょう。
パートナーとのコミュニケーションを増やすことも、ストレス軽減につながります。
精子の質を高めるための食事・サプリメント
先に述べたように、精子の材料は日々の食事から作られます。
ここでは、特に意識して摂りたい栄養素と、補助的に取り入れたいサプリメントについて紹介します。
精子の生成や機能を助けるために、特に以下の栄養素と食品を意識して摂りましょう。
| 必要な栄養素 | 期待できる役割(精子への影響) | 豊富な食品の例 |
|---|---|---|
| 亜鉛 | 精子生成や運動率向上に関わる | 牡蠣、牛肉・豚肉(レバーなど)、ナッツ類(カシューナッツなど) |
| 葉酸 | 精子のDNA損傷を防ぐサポート | ほうれん草、ブロッコリーなどの緑黄色野菜、豆類、レバー |
| ビタミンE | 抗酸化作用 | アーモンド、アボカド、うなぎ |
| CoQ10 | 抗酸化作用 | 青魚、肉類、ナッツ類 |
これらの食材を毎日の食卓にバランス良く取り入れることが、精子の質改善への近道です。
一方で、精子の質を低下させる可能性のある食品や飲み物には注意が必要です。
高脂肪食や加工食品の摂りすぎは、体内で酸化ストレスを高め、精子の質を低下させる原因になると考えられています。
また、過剰なカフェイン摂取も推奨されていません。
ファストフードやインスタント食品、スナック菓子などの高脂肪・高カロリーな食事を減らし、ジュースやエナジードリンクなど糖分の多い飲み物も控えめにしましょう。
食事だけで必要な栄養素を補うのが難しいと感じる場合は、サプリメントの活用も一つの選択肢です。
例えば、男性妊活サプリメントには、前述した亜鉛やCoQ10に加え、活力をサポートするマカなどが配合されていることも多いです。
これらは、不足しがちな栄養素を手軽に補給するのに役立ちます。
ただし、サプリメントはあくまで食事の補助役であることを理解しておきましょう。
過剰摂取は体調不良につながる可能性もあるため、摂取を始める前に医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
妊活を始めたらまず検討したい男性の検査
生活習慣や食事の改善は重要ですが、なかなか結果が出ないと不安になってしまいます。
そのような不安を解消し、次のステップに進むために、「男性の検査」を検討してみましょう。
男性不妊の主な原因と検査の種類
男性にも不妊の原因となるさまざまな要因があり、それを特定するためにいくつかの検査があります。
男性不妊の原因は、主に以下の3つに分けられるからです。
- ・精巣(睾丸)の機能障害: 精子を作る力が弱い、または作られていない状態
- ・精子の通り道の閉塞: 精子が体外へ出ていく管が詰まっている状態
- ・ホルモン異常: 精子の生成を促すホルモンバランスが崩れている状態
具体的な検査の種類は、以下のとおりです。
| 検査の種類 | 目的 | 詳細 |
|---|---|---|
| 精液検査 | 精子の状態を調べる | 精子の量、濃度、運動率、正常な形の精子の割合などを調べる、最も基本的な検査 |
| 血液検査 | ホルモンバランスを調べる | 精子の生成に必要なホルモン(テストステロンなど)が正常か、炎症がないかなどをチェック |
| 超音波(エコー)検査 | 精巣の形態を調べる | 精巣のサイズや、精子の通り道に問題がないかなどを画像で確認 |
検査を受けることで、漠然とした不安の正体を具体的に知ることができ、次の対策を立てる準備ができます。
検査を受けるメリットと、どこで受けられるか
検査を受ける最大のメリットは、「早期の問題発見と不安の解消」です。
検査で問題が判明すれば、すぐに原因に応じた適切な治療(生活指導、投薬、または手術など)に進むことができるからです。
また、もし問題がなかった場合でも、「自分に原因はない」という安心感を得られ、精神的なストレスが大きく軽減されます。
どこで検査を受けられるかというと、主に以下の医療機関で可能です。
- ・泌尿器科
- ・不妊治療専門のクリニック(婦人科と泌尿器科を併設しているところが多い)
検査は「悪い結果を知るためのもの」ではなく、「前に進むための確実な一歩」と捉え、まずはパートナーと相談して、最寄りの医療機関を探してみましょう。
パートナーとの妊活を円滑に進めるために
妊活は二人三脚で進めるものです。体の改善と並行して、パートナーとの関係性を円滑にすることも大切です。
特に、精神的な負担を理解し、お互いの気持ちを尊重するようにしましょう。
男性が抱えがちな悩みやストレス
妊活中に男性も精神的なストレスを感じているケースは少なくありません。
「自分に原因があるのでは」というプレッシャーや、「パートナーに申し訳ない」という罪悪感、さらには「デリケートな話なので周りの友人や同僚に相談できない」という孤独感からです。
男性は特に、妊活の悩みを内側に溜め込みがちになる傾向があります。
精神的な負担は、精子の質にも悪影響を及ぼしかねません。
男性自身がこれらの感情を自覚し、溜め込まないようにしましょう。
パートナーと本音で話し合うためのポイント
ストレスを軽減し、妊活を円滑に進めるためには、パートナーとのコミュニケーションがカギになります。
重要なのは、「二人で一つのチーム」という意識を持つことです。
具体的なポイントは以下のとおりです。
- ・お互いの体調や、検査・治療の予定について話し合う時間を意識的に作る
- ・お互いの気持ちを「尊重」する
- ・妊活がうまくいかない原因を、パートナーや自分自身のせいにしない
パートナーと定期的に話し合い、精神的な支え合いをすることで、妊活はより前向きで明るいものになります。
まとめ
不妊の原因は約半数が男性側にもあり、生活習慣、食事、ストレス管理が精子の質に直結します。
まずは、この記事で紹介した生活習慣の改善から実践してみてください。
妊活は長期戦になることもありますが、男性も積極的に行動し、パートナーと心を一つにすることで、きっと明るい未来につながります。
監修

淺川 純平
Revios MEN’S CLINIC院長・泌尿器科専門医
泌尿器科専門医として長年にわたり幅広い男性診療経験をもっています。
特に専門性が高いのは、包茎手術・性感染症治療・ED治療・男性ホルモン治療の分野。多くの患者様から信頼を集めています。
医療の現場で培った知識をもとに、SNSやコラムを通じて正しい医療情報を発信中。患者様お一人おひとりの不安に寄り添い、安心して治療を受けていただける環境づくりを心掛けています。
このコラムではそんな院長の信念のもと、わかりやすく正確な情報をお届けしています。