細菌の一種である淋菌に感染することで起こる淋病は、世界中で多くの感染報告のある性病です。日本では男性の感染報告数が多くあり、淋病による急性尿道炎で性器などに痛みや不快感があらわれることもあります。
淋菌に感染した場合、医療機関では実際にどのような治療が行われるのでしょうか。本記事では、淋病とはどのような性病かをはじめ、淋病の症状や医療機関での治療方法などについて解説します。
淋病は感染報告が多い性病
淋病(淋菌感染症)は、細菌の一種である淋菌に感染することで起こる性感染症です。淋病は世界中で多くの感染報告があり、日本では特に男性の感染報告が多いという特徴があります。
男性と比較して女性の感染報告数が少ない要因として、女性の淋病は自覚症状のないケースが多いことが考えられます。淋菌の感染に気づいていない女性との性行為によって男性側にも感染し、知らぬ間に淋病を発症するケースもあるため注意が必要です。
淋病の感染経路は?
淋菌は高温にも低温にも弱く、日光や乾燥、消毒剤によっても死滅する細菌です。このように、淋菌は弱い菌です。しかし、ヒトの粘膜の中では生存できるため、ほとんどの場合性行為によって感染します。
ただし、通常のセックスだけでなく、オーラルセックスやアナルセックスなど、感染部位の粘膜と接触する行為や、分泌物との接触によってさまざまな部位に感染する点に注意が必要です。
主な感染部位は性器のほか、喉や直腸、目などがあります。喉への感染はオーラルセックスやキスによって、直腸や肛門はアナルセックスによって感染します。また、感染した部位を触った手で目をこするなどして、まれに目にも感染することもあります。
淋病の症状
淋病に感染すると、急性尿道炎によって膿や粘液性の分泌物が尿道から排出されることがあります。排尿時の激しい痛みや尿道のかゆみ、不快感などの症状があらわれることもあるでしょう。
これらの症状は、感染直後ではなく、感染から2~10日間の潜伏期間を経てあらわれます。オーラルセックスやアナルセックスによる感染では、喉や直腸にも症状があらわれることもあります。
喉への感染は無症状のケースが多く、自覚症状がある場合には喉の腫れや痛み、扁桃腺の腫れ、発熱など咽頭炎のような症状があらわれることもあります。
直腸への感染の場合も無症状のケースが多く、自覚症状がある場合には肛門のかゆみや不快感、下痢・血便、アナルセックスの際の痛みを感じることがあるでしょう。
菌のついた手で目をこするなどして目に感染することもまれにあります。目に感染した場合は、瞼や結膜の腫れ、膿が出るなどの症状があらわれることがあります。
淋病の治療の方法
淋病と思われる症状が出ている、あるいは症状はないものの感染に心当たりがある場合には、医療機関で検査・治療を受けることが大切です。
淋病の検査は、尿検査や尿道からの分泌物を採取して行われます。喉への感染が疑われる場合には、うがい液で検体を採取し検査を行います。これらの検査で体に負担を感じることはないでしょう。
検査の結果、陽性だった場合には、抗菌薬(抗生物質)の服用や点滴、注射などで治療が行われます。
内服による治療の場合は抗菌薬を数日服用し、点滴治療では10分程度静脈から治療薬を点滴します。注射による治療では、基本的に1度の筋肉注射で終了します。ただし、これらの治療は重症度によって回数や治療期間が長引くこともある点を理解しておきましょう。
淋病の治療にかかる費用
淋病の治療には、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。治療費の相場は次の通りです。
保険診療 | 自由診療 | |
抗菌薬(抗生物質)の内服 | 1,000〜2,000円程度 | 7,000〜9,000円程度 |
点滴・注射 | 2,000円前後 | 9,000〜2万円程度 |
健康保険が適用される保険診療は、原則として症状が出ていないと検査や治療ができません。淋病では自覚症状がないケースも多くあるため、症状がない状態で検査・治療を受けたい場合には、自由診療で受けることになるでしょう。自由診療の場合、医療機関によって料金が異なるため、費用への不安や疑問がある場合には、事前に問い合わせるなどして費用を確認しておくと安心です。
淋病が完治するまでの期間は?
淋病の治療から完治までにかかる期間はそれほど長くありません。抗菌薬の内服による治療の場合、数日から1週間程度です。点滴や筋肉注射では、1~2回程度の治療が目安です。
ただし、重症化している場合には、治療が目安よりも長期化することがあります。淋病に感染した可能性がある場合には、重症化する前に医療機関を受診し、早めに治療をスタートすることが大切です。
治療中の注意点
淋病の治療中には、注意したいことがいくつかあります。まず、治療をスタートしてから完治の確認までに症状がなくなったからといって、抗菌薬の服用を途中でやめないようにします。完治する前に自己判断で抗菌薬の服用をやめてしまうと、淋菌が抗菌薬に耐性をもってしまう可能性があります。「処方された薬は必ず飲み切ること」が大切です。
また、治療から完治の確認までの間に、性行為をしないようにしましょう。相手も淋菌に感染してしまう可能性があるほか、淋菌に感染した相手と再度性行為をすることで自分にも感染する「ピンポン感染」が発生してしまう可能性があります。
検査の結果、淋菌の感染があった場合には、パートナーにも検査・治療を受けてもらうことが重要です。前述したピンポン感染を防ぐためにも、パートナーには淋病であることや、検査を受けてもらいたいことを伝えましょう。
放置するとどうなる?
淋病を治療せず放置していると、重症化しほかの部位にも炎症が生じてしまう可能性があります。
男性の場合、尿道から精巣に淋菌が侵入することで、精巣上体炎を引き起こすことがあるため注意が必要です。精巣上体炎になると、睾丸に腫れや痛みが出るほか、発熱することもあります。さらに悪化した場合には、無精子症のリスクもあります。
重症化しないためには、淋菌に感染した可能性があるときには無症状でもすぐに医療機関を受診して検査・治療を行うことが重要です。感染に心当たりがある場合には、早めに治療を開始できるよう行動することをおすすめします。
淋菌に感染したかも?と思ったら病院へ
世界中で多くの感染報告のある淋菌は、身近な性病の一つです。淋菌に感染しても自覚症状がないケースも多いことから、感染に気付かず性行為などによって他人にうつしてしまったり、いつの間にかうつされてしまったりしていることがあります。
淋病の治療は抗菌薬の内服や点滴・注射などで行われ、重症化していなければ比較的短期間で完治します。淋菌に感染した可能性がある場合には、重症化する前に、症状の有無にかかわらず医療機関にて検査・治療を受けるようにしましょう。
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参考
監修
淺川 純平
ReVIOS MEN’S CLINIC院長・泌尿器科専門医
泌尿器科専門医として長年にわたり幅広い男性診療経験をもっています。
特に専門性が高いのは、包茎手術・性感染症治療・ED治療・男性ホルモン治療の分野。多くの患者様から信頼を集めています。
医療の現場で培った知識をもとに、SNSやコラムを通じて正しい医療情報を発信中。患者様お一人おひとりの不安に寄り添い、安心して治療を受けていただける環境づくりを心掛けています。
このコラムではそんな院長の信念のもと、わかりやすく正確な情報をお届けしています。